2002年12月22日
第47回 有馬記念
1994年4月25日。
天皇賞・春を制覇しアメリカのワシントンD.C.インターナショナル、ヨーロッパのキングジョージ、ドーヴィル大賞典、凱旋門賞と出走。帰国後も有馬記念、宝塚記念と勝利し引退レースの有馬記念でも再び勝利したスピードシンボリ。東京優駿を勝った後、海外で戦い続けたシリウスシンボリ。無敗の8連勝で3冠を制し、G1・7勝を挙げたシンボリルドルフと、数多くの名馬を生産・育成して競馬界に送り出し、日本の競馬界のさらなる発展と自身の夢の為に、海外への道筋をつけた1人の男がこの世を去った。和田共弘・71歳。シンボリ牧場の生産者であり2代目オーナーである。

和田共弘氏の亡き後、シンボリ牧場を引き継いだのは和田孝弘氏。徐々に外国産馬の活躍の場が増えてきた日本競馬界で、先代の残した「人間関係」という財産を最大限に活用し、海外にも拠点を置いた生産・育成を続けた。種牡馬を海外から輸入して日本で生産するよりも、海外で競走馬を生産して日本に連れてくるほうがリスクも少なく、効率のよい方法となる時代になっていたからだ。
先代がヨーロッパを中心に生産を続けていたのに対し、孝弘氏は継承後、そのヨーロッパの馬達を整理し能力の高い繁殖牝馬を厳選してアメリカにその拠点を移した。アメリカのほうがより種牡馬のバラエティーに富んでいたからである。
この事が功を成す。1996年に生まれた米国産馬シンボリインディがシンボリルドルフ以来、14年ぶりとなるG1制覇を遂げたのだ。
2002年4月。
第9回テレビ東京杯青葉賞(G2)を、シンボリの冠をもつ馬が制した。
Photo:(C)Horses.JP
米国産、生産者「Tワダ」、馬主「シンボリ牧場」、父「クリスエス」・母「ティーケイ」。
その馬の名は「シンボリクリスエス」。

青葉賞を制し、東京優駿への切符を手にしたシンボリクリスエスは、和田孝弘氏の選択が正しい事を証明するかのように、マル外でありながら東京優駿へと駒を進めた、

この東京優駿の1番人気にはタニノギムレット。この馬も「歴史」を背負っていた。
生産者はタニノハローモア、タニノムーティエと2頭もダービー馬をターフに送り出したカントリー牧場。谷水雄三氏がこのカントリー牧場の2代目オーナーでありタニノギムレットの馬主である。
凱旋門賞を勝ったシーバードの娘タニノシーバードは米国で2勝を挙げた後、日本に輸入されて数頭の馬の母となった。9番目に産み落とした牝馬タニノクリスタルはなかなか優秀でアネモネSに勝利し、桜花賞・オークスと健闘したのだが、40戦3勝の成績で母馬になる道へと向かった。このタニノクリスタルにブライアンズタイムが交配されて誕生したのがタニノギムレットである。
オーナーブリーダーの信念が作り上げたこの馬は傑作だった。新馬戦こそ敗れてしまったが、その後は重賞で3連勝を飾り、続く皐月賞・NHKマイルCと3着に入る活躍を見せ、この戦場に辿り着いたのだ。

2番人気には皐月賞でタニノギムレットを破ったノーリーズン。距離延長に不安がありながらもやはり皐月賞馬は見限れない。以下にシンボリクリスエス、NHKマイルC馬テレグノシス、皐月賞2着タイガーカフェ、デザーモ騎乗の連対率100%マチカネアカツキと続いた。

ゲートが開くと、共同通信杯を逃げて2着に粘り込んだサンヴァレーが先頭に立った。かなりゆっくりとマイペースの走り。後続も遅れることなく追走し、馬群は濃縮されたひとつの塊となって進んでいく。4角を回りきると、この塊が膨らみ、弾けた。最内の隙間から飛び出してきたのはマチカネアカツキ。僅かに先頭に立つが後ろも離れない。ゴールドアリュール、メガスターダムが必死に喰らいつく。残り200M、外から遂にシンボリクリスエスがやってきた。一気に伸びて内の馬達をまとめて捉える!が、そのさらに大外からじっくり脚をためて直線での勝負に備えていたタニノギムレットが、ジリッジリッと追い上げ、1頭また1頭と抜き去り、前にいた全ての馬達を抜かしたところが東京優駿のゴールだった。
レースを観戦していた谷水雄三氏は「ありがとう、ありがとう!」と繰り返し、周囲の者と堅く手を握りあい、「最高だ、言葉にならん。夢のダービーだ」と笑みをこぼした。
僅か1馬身の差で東京優駿の栄冠を取り逃したシンボリクリスエスは、その差を埋めるべく秋まで休養に入った。
さらに完成に近付いたシンボリクリスエスの復帰初戦に選ばれたのは9月22日の神戸新聞杯。しかしここにはタニノギムレットの姿は無かった。菊花賞トライアル・セントライト記念にさえも。
残念な事に復帰直前の調教中に左前脚屈腱炎を発症。9月5日に引退を表明していたのだ。
Photo:(C)Horses.JP
東京優駿2着馬はここでは断然の1番人気に推された。タニノギムレットを失ったファンの期待までも背負う事になったのかもしれない。
しかしシンボリクリスエスはこの期待に見事応えてみせた。皐月賞馬ノーリーズンも、宝塚記念3着のローエングリンも蹴散らして2馬身1/2もの着差をつけて圧勝した。
和田孝弘氏は「ダービー馬のタニノギムレットを神戸新聞杯で負かしたいと思っていました。故障引退は本当に残念です。」と後に語っている。

復帰初戦を圧勝で飾ったシンボリクリスエスが次に向かったのは菊花賞ではなかった。「現在の主流はスピード血統。距離3000Mの菊花賞には以前程の価値は無い」というのが管理を任されていた藤沢和雄調教師の弁である。
向かった先は古馬中距離界の頂点、天皇賞・秋。3歳馬にとって過酷なレースというのが多くの者の見方だったのだが、師は幾度か3歳馬をこの天皇賞・秋に挑戦させバブルガムフェローで勝利もしている。この馬も十分ここで通用するとの判断だ。
1番人気に推されたのはテイエムオーシャン。牝馬限定ながらもG1・3勝。8ヶ月振りの札幌記念では+38キロという体重増にも拘わらず牡馬達を一蹴。その成長ぶりを見せつけて注目を集めた。殆ど差のない2番人気にはナリタトップロード。「2強」もターフを去り、マンハッタンカフェもジャングルポケットもいないここでは当然か。3番人気にはシンボリクリスエス。初めての古馬との対戦となるが、東京優駿では2着し、神戸新聞杯で皐月賞馬を下したのだからこの評価も順当だろう。
G1馬が6頭も集まったこの年の天皇賞・秋。栄光の盾を手にしたのは3歳馬シンボリクリスエスだった。残り200Mで岡部幸雄騎手の合図に応えてラストスパート。早々と先頭に立ったテイエムオーシャンを、あっさりかわすと力強く突き離してゆく。外からほぼ同時に抜け出してきたサンライズペガサスとは明らかに脚色が違う。ナリタトップロードがそのさらに外から追い込んでくるがシンボリクリスエスの勢いにはかなわなかった。

天皇賞・秋で早くも頂点に立つと今度はジャパンカップに出走。海外からの挑戦者を日本の王者として迎え撃つ。エルコンドルパサー、ジャングルポケットが勝っているように、3歳馬にも十分チャンスがあるジャパンカップ。天皇賞で力強い走りを見せたシンボリクリスエスは1番人気に推された。2番人気にはナリタトップロード。3番人気には天皇賞・春以来の出走になるジャングルポケット。久々だが昨年の覇者が真価を発揮できるか。
残念な事がスタートでは起きてしまった。シンボリクリスエスがやや興奮気味に脚をバタつかせ、少し立ち上がってしまった瞬間にゲートが開いてしまった。いかに強い馬と言えどもこの出遅れは痛い。すぐさま好位につけて直線に臨んだが、結果はハナ・クビ差の3着。やはり最後でこの差が出てしまった。

2002.12.22 第47回 有馬記念(G1)

毎年、多くの強豪が集まる有馬記念。この2002年も例外では無かった。出走馬14頭のうち9頭がG1勝馬。またファン投票結果の上位10頭のうち9頭が出走する事になり人々の注目も集まった。
その中で1番人気に推されたのはここまで無敗の6連勝、牝馬限定ながらもG1・2勝のファインモーション。「無敗」の可能性が人々には大きく期待され、また鞍上はここまでに130勝以上をマークしている武豊となり、3歳牝馬には過剰とも言える支持を集めていた。
2番人気には同じく3歳のシンボリクリスエス。東京優駿で2着し、天皇賞・秋では古馬達を完封。ジャパンカップでは日本馬最先着とここまでの成績は申し分ない。また鞍上は日本国内はもちろん、世界でもトップクラスのO・ペリエが前走に続いて騎乗する事になりファインモーションとあまり差のない支持を集めていた。
3番人気には久々のジャパンカップで5着に入線し、復調を感じさせるジャングルポケット。3歳時に東京優駿、ジャパンカップを制しているこの馬の強い姿を再び見たいという期待の表れか。
4番人気にはファン投票1位のナリタトップロード。世代を跨いで強豪達と好勝負してきたこの馬のラストランにはこの4番人気という支持以上の期待が集まっていた。
Photo:(C)Horses.JP
まさにグランプリと呼べる顔ぶれは格理論で見ても同様だ。
格理論で考察してみよう。

G1級はジャングルポケット。休み明け初戦で好成績を挙げられず近走は×となっているのは残念だが、ここで再び能力の違いを見せつける事ができるか。続くG2級は5頭もいる。格がG2Aで近走も全て○の馬はシンボリクリスエスとナリタトップロード。特に鞍上O・ペリエのシンボリクリスエスはここでも中心的存在だろう。他にも近走が物足りないとはいえ有馬記念で好走の多いと言われる菊花賞馬ヒシミラクル、2冠馬エアシャカールも侮れない。残りの馬は全てG3級だ。朝日CCから好走を続けるタップダンスシチーがG3級の中では唯一、近走が全て○になっており有力か。

幸いな事に出遅れた馬は1頭もいなかった。ポーンと飛び出し、いきなり先頭に立ったのは1番人気ファインモーション!場内からは大歓声だ。遅れてなるかとそれまでにも前からの競馬で好成績を残していたタップダンスシチーが並びかけ前に出る。武豊は慌てる事なく先に行かせるとその後ろで折り合いに専念した。しかし1周目のスタンド前にさしかかると馬が興奮したのを抑えきれなくなったのか、再びファインモーションが先頭に踊りだしリードを広げ始めた。
これを黙って見ていられなかったのは再びファインモーションに並び、そして抜いていったタップダンスシチーだ。残り1000Mを過ぎる頃には先頭に立ち、3馬身、4馬身、5馬身と引き離していった。
4角を過ぎてもこのリードは変わらない。残り300M、縦に長く伸びていた馬群がググッと縮まり加速する。まずファインモーションに追いついたのはコイントス。最内を柵に沿って周り2番手に浮上するとジリジリと先頭に詰めよる。女王の意地を見せて必死に粘る3歳牝馬に、今度は外からも1頭が襲いかかった。残り200MでO・ペリエの剛腕に押し出されて、凄まじい瞬発力で加速し始めたシンボリクリスエスだ。ファインモーション、コイントスと並ぶ間もなく追い抜いてゆく。残りいよいよ100M!O・ペリエが何発か鞭を入れると、驚かされることにさらにもう1段の加速をしゴール直前、先頭のタップダンスシチーもきっちり捉えてゴールしてみせた。
最後の最後まで粘り通したタップダンスシチーの佐藤哲騎手は「陣営も気合いを込めて仕上げてくれていた。最後、鞭を持ち替えた時にモタれてしまった。そのまま追っていれば・・・」と残念がった。
Photo:(C)Horses.JP
3歳の身ながら古馬相手に互角以上の活躍で完全に2002年の主役へと昇りつめたシンボリクリスエス。シンボリ牧場に揺蕩い流れ行く歴史の中から産み出された新しい時代の象徴であろう。
レース後、和田孝弘氏は「これで先代にいい報告ができる。1つ勝ったぐらいで調子に乗るなと怒られちゃうかな」と笑顔で有馬記念の初制覇を喜んだ。



2002年 12月 22日
天気 − 曇り
馬場 − 稍重

中山 9 R
有馬記念
G1(定量)

芝 右 2500 M   14 頭立

馬    名 性年 斤量 馬体 全格 出走 芝格 出走 休み 連闘 中央 クラ 別定 特別 馬場 頭数 古混 牡混 他条 タイム 人気 オッズ  
1 1 シンボリクリスエス 
ペリエ
3 55.0 528
-8
G2 A 10 G2 A 10
2.32.6 2 3.7  
2 8 タップダンスシチー 
佐藤哲三
5 57.0 500
-8
G3 B 26 G3 B 26
2.32.7 13 86.3  
3 2 コイントス 
岡部幸雄
4 57.0 538
+8
G3 A 12 G3 A 10
×
2.33.0 8 29.2  
4 11 ナリタトップロード 
渡辺薫彦
6 57.0 506
+8
G2 A 29 G2 A 29
2.33.4 4 10.6  
5 12 ファインモーション 
武豊
3 53.0 482
-6
G3 A 6 G3 A 6
2.33.4 1 2.6  
6 6 ノーリーズン 
蛯名正義
3 55.0 476
+2
G3 A 8 G3 A 8
×
2.33.7 6 20.8  
7 9 ジャングルポケット 
藤田伸二
4 57.0 476
-2
G1 A 12 G1 A 12
×
×
×
×
×
×
×
×
2.33.9 3 4.5  
8 13 フサイチランハート 
バルジュ
5 57.0 494
+6
G3 C 15 G3 C 15
×
×
×
×
×
×
×
×
2.33.9 14 94.9  
9 4 エアシャカール 
横山典弘
5 57.0 510
+2
G2 C 19 G2 C 18
×
×
×
×
×
×
×
×
2.34.1 7 21.1  
10 5 テイエムオーシャン 
本田優
4 55.0 468
+6
G3 B 13 G3 B 13
×
×
×
×
×
×
×
×
2.34.1 10 33.2  
11 3 ヒシミラクル 
角田晃一
3 55.0 464
+4
G2 A 17 G2 A 17
×
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
2.34.2 5 18.5  
12 14 アクティブバイオ 
後藤浩輝
5 57.0 502
+2
G3 B 28 G3 B 28
×
×
×
×
×
×
×
×
2.34.4 12 72.6  
13 7 アメリカンボス 
江田照男
7 57.0 492
+6
G3 B 40 G3 B 33
2.34.7 11 62.7  
14 10 イーグルカフェ 
田中勝春
5 57.0 486
+14
G2 A 31 OP B 21
×
×
×
×
×
×
×
×
2.34.9 9 29.3  

 

単勝 1 370 円 2 人気
複勝 1 150 円 1 人気
8 1250 円 12 人気
2 470 円 6 人気
枠連 1 - 5 5130 円 17 人気
馬連 1 - 8 14830 円 36 人気
ワイド 1 - 8 3530 円 38 人気
1 - 2 1050 円 4 人気
2 - 8 6040 円 59 人気
馬単 1 - 8 20630 円 53 人気
三連複 1 - 2 - 8 40570 円 98 人気