1999年6月13日
第49回安田記念
「a fluke」・・・まぐれ 紛れ
「まぐれ」・・・思いがけず、ある結果になること。偶然。

競馬に「まぐれ」など存在するのであろうか?

95年4月9日。社台ファームで1頭の馬が生を受けた。美しい栗毛の名馬、エアジハードの誕生である。
父親はサクラユタカオー。天皇賞をレコードで勝利した快速馬だ。
「偶然」はここから始まった。

エアジハードのデビューはやや遅く、12月。鞍上には武豊騎手を配し万全の体制で臨んだのだが、ゲートでは1馬身出遅れてしまった。だが冷静な騎手の手綱捌きのもと、1.8倍の断然人気にしっかり応えた。
名手と共に階段を登り始めたのもこの馬の幸運な「偶然」のひとつと言えよう。

続くカトレア賞はダート戦であったが、今度はエアジハードを手の内に収めた武豊によって順調にゴールまで導かれた。
強さを認められたエアジハードは、いよいよ重賞へと出走した。スプリングS、なんといきなりのG2挑戦だ。
早い時期から勝利を重ね、このレースの前にもアーリントンCを休み明けで3着に入っていたタヤスアゲインが1番人気になった。エアジハードは少し離れた2番人気だ。
道中、後方から進み、淀みの無い流れの中を、機を窺っていたエアジハードだったが直線では豪快な差し脚を見せて伸びてきた。
出走馬の中で最も速い後半3ハロンの時計であったが、少し距離が長かったのか4着に敗れてしまい、
以降エアジハードは短距離路線を進む事になる。
このレースに出走した事もこの馬の幸運な「偶然」のひとつと言えよう。

そしていよいよG1に挑戦する運びとなった。「外国馬のダービー」とも称されるNHKマイルCである。
17頭の出走馬の中で、外国産馬はなんと13頭。父内国産馬はエアジハードただ1頭。
圧倒的1番人気はここまで4連勝のエルコンドルパサー、2番人気にもやはり4連勝のトキオパーフェクトが続く。エアジハードの人気はなんと単勝60.5倍の10番人気であった。
ゲートが開くとエアジハードはダッシュがつかず、大きく出遅れてしまい、全く見せ場なく8着に敗れる残念な結果となった。
この後さらなる成長にむけて、エアジハードは5ヶ月に及ぶ休養に入った。
この事も幸運な「偶然」と言えよう。

天高く馬肥ゆる秋。
エアジハードもしっかり成長して帰ってきた。馬体重はプラス12キロもあったが、900万下、奥多摩Sと順調に勝利して体重増が成長の証しとなった。続くG3の富士Sも危な気なく勝利し、3連勝を飾った。

年が明けて4月。
エアジハードの始動はオープン特別の谷川岳Sからとなった。富士Sを勝ったエアジハードは5ヶ月近くの休み明けながらも抜けた1番人気となったが、応えることはできず、ナリタプロテクターに首差敗れてしまった。
1戦走ったエアジハードはすぐにG2の京王杯スプリングCに出走する。このレースには昨年の有馬記念の勝者、グラスワンダーが登場してきた。もちろん断然の1番人気である。
他にもマイル重賞で好成績を残してきたケイワンバイキング、阪急杯2着のブロードアピールとなかなかの好メンバーが揃い、エアジハードはこの3頭に続く4番人気に支持された。

グラスワンダーはやはり"怪物"だった。4ヶ月以上のブランクをものともせず後半3ハロン、33.3秒の末脚で大外から一気に伸びて勝利した。
エアジハードも必死に喰らいついたが抜き返す事などできず2着に敗れる。
このレースで超一流の力を知ったのもエアジハードにとって幸運な「偶然」のひとつと言えよう。

1999年6月13日 東京競馬場11レース 芝・左 1600m 安田記念(G1)

強豪が揃う春のマイル王者決定戦にエアジハードも挑戦した。
1番人気はグラスワンダー。なんと単勝オッズ1.3倍である。
前走の京王杯スプリングCで見せたスピードと、有馬記念制覇の距離に対する柔軟性が高く評価されたのであろう。メディアとファンの関心も「グラスワンダーがいかにして勝つか?2着はどの馬か?」の2点のみでしかなかった。
2番手にはキングヘイロー。東京新聞杯、中山記念と連勝し短・中距離への高い適性が評価された格好だ。
3番手にはシーキングザパール。ここまでに獲得した重賞は国内で6タイトル、海外で1タイトル。国内と海外と両方でG1に勝利した名馬である。
エアジハードはこの3頭に続く4番人気だ。

格理論で分析してみると
G2級はグラスワンダーとシーキングザパール。
シーキングザパールにもNHKマイルCという実績があるものの、やはり距離適性はグラスワンダーの方が高いと思われる。
鞍上は的場均騎手と武豊騎手と甲乙つけがたい。
以下、G3級には6頭が出走し、G1と呼ぶのに相応しいレースとなった。

ゲートが開いた。
1頭遅れたのはなんとキョウエイマーチだ。
ペースを決めると思われた逃げ馬の遅れに場内がざわめく。
武幸四郎騎手が周りの様子を窺いながら自然にアグネスワールドを先頭に立たせるとその後ろにキングヘイローが続く。グラスワンダーは中団あたりを進み、エアジハードはそのすぐ後ろにつけた。
4角をまわりペースが上がると、外に持ち出されたグラスワンダーが一気に先頭に立つ。ほぼ同時にシーキングザパールもスパートしジリジリ伸びてくる。
その時、大外から輝く馬体が弾け跳んできた。ただ1頭、ゴールを目指すグラスワンダーに巧みに馬体を寄せ、激しいデッドヒートだ。
場内の歓声が一際大きくなり、悲鳴が混じる!
外・エアジハード、内・グラスワンダー。
微妙な勝負だったが、安田記念に勝利したのはエアジハードだった。

ここまでに「右回り」では1度も負けた事が無かったグラスワンダー。
この事も「左回り」を得意とするエアジハードにとって幸運な「偶然」・・・

いや、もういいだろう。全ては「偶然」などではない。
全ての「必然」がエアジハードを安田記念の勝利に導いたのだ。


レースの後、多くの者がエアジハードの勝利を「フロック」と呼んだ。
しかしエアジハードは秋にもマイルCSを勝利しJRAの「最優秀短距離馬」と「最優秀父内国産馬」を受賞。自身の力を証明してみせた。

2003年。
エアジハードの血を継ぐ者が駆りだす。
「必然」と共に・・・。
1999年 6月 13日
天気 − 晴れ
馬場 − 良

東京 11 R
安田記念
G1(定量)

芝 左 1600 M   14 頭立

馬    名 性年 斤量 馬体 全格 出走 芝格 出走 休み 連闘 中央 クラ 別定 特別 馬場 頭数 古混 牡混 他条 タイム 人気 オッズ  
1 12 エアジハード 
蛯名正義
4 58.0 494
-6
G3 A 9 G3 A 8
1.33.3 4 17.7  
2 7 グラスワンダー 
的場均
4 58.0 498
0
G2 A 8 G2 A 8
1.33.3 1 1.3  
3 11 シーキングザパール 
武豊
5 56.0 466
-6
G2 A 18 G2 A 15
1.33.7 3 11.4  
4 14 ツクバシンフォニー 
横山典弘
6 58.0 494
0
G3 B 21 G3 B 21
×
×
1.33.8 10 47.7  
5 8 ムータティール 
サプル
4 58.0 484
0
B 5 B 0
×
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
1.33.8 6 26.9  
6 13 エガオヲミセテ 
河内洋
4 56.0 448
+6
G3 A 12 G3 A 12
×
×
×
×
×
×
×
×
1.34.0 11 52.5  
7 6 タイキブライドル 
岡部幸雄
4 58.0 480
-4
OP A 10 OP A 9
×
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
1.34.2 8 40.4  
8 3 アグネスワールド 
武幸四郎
4 58.0 510
-4
OP A 9 OP A 7
×
1.34.6 7 36.8  
9 5 キョウエイマーチ 
秋山真一
5 56.0 494
-6
G3 A 20 G3 A 17
1.34.7 9 43.6  
10 4 ヒロデクロス 
吉田豊
7 58.0 460
0
G3 D 47 G3 D 46
×
×
×
×
×
×
×
×
1.35.0 13 222.7  
11 10 キングヘイロー 
柴田善臣
4 58.0 486
+10
G3 A 13 G3 A 13
×
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
1.35.1 2 6.0  
12 1 オリエンタルエクス 
サンマル
6 58.0 500
+10
A 6 A 1
×
-
-
-
-
-
-
-
-
1.35.7 5 26.5  
13 2 シンコウウインディ 
後藤浩輝
6 58.0 528
+42
G2 C 12 A 3
×
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
1.36.7 14 273.0  
14 9 ホーリーグレイル 
ユー
5 58.0 490
0
B 5 B 0
×
-
-
-
-
-
-
-
-
1.38.1 12 205.2  

 

単勝 12 1770 円 4 人気
複勝 12 190 円 4 人気
7 110 円 1 人気
11 190 円 3 人気
枠連 5 - 7 320 円 1 人気
馬連 7 - 12 650 円 3 人気
ワイド 0 - 0 0 円 0 人気
0 - 0 0 円 0 人気
0 - 0 0 円 0 人気